第14話 血の気しか感じさせない面子

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第14話 血の気しか感じさせない面子

              第二章                  14  カツカツカツ……とパンプスでリズムよく音を立て、黒のパンツスーツで上下をビシッと決めた女性が綺麗な長い黒髪をなびかせ、とある建物の廊下を颯爽と歩き、部屋に入る。 「……おはようございます」  女性が切れ長な目をさらに細め、挨拶する。ここは時代管理局、通称『時管局(じかんきょく)』の一つの課、『現代課』である。女性は複数の課員と挨拶をかわしながら、自らのデスクへと向かう。 「zzz……」  女性の席の向かいのデスクで、男性がよれたスーツで、短めの茶色い髪も少しボサっとさせて、デスクに足を乗せ、椅子の背もたれに寄りかかりながら、豪快に舟をこいでいる。 「……おはようございます、平成(へいせい)さん」 「んあ⁉ あ、お、おはよう、令和(れいわ)ちゃん……」  目を覚ました男性が目をこすりながら挨拶を返す。顔立ちこそはある程度凛々しいこの青年が平成、椅子に腰かけた女性が令和。ともに時管局で働く『時代』という存在である。 「……また徹夜ですか?」 「ああ……言っておくけど、ゲームをして遊んでいたんじゃねえぜ?」 「……端末に思いっきり『ソリティア』の画面が映っていますよ」 「え⁉ い、いや、俺がやっていたのは『マインスイーパー』だぜ? あ……」  平成が黒いままのモニターを見つめながら、自らの口元を抑える。令和がため息をつく。 「はあ……やっぱり遊んでいたんじゃないですか……」 「ちょっと息抜きでだよ……仕事はちゃんとやっていたさ……後は確認するだけだ……」 「そんなに時間がかかるものですか? 言っていただければ、お手伝いしましたのに……」 「令和ちゃん、なんだかんだで優しいよねえ……」 「徹夜はお体に悪いですよ、若作りしているだけでもうお若くないのですから……」 「ぐおっ⁉」 「それに……極めて不本意ではありますが、今は平成さんと私はバディなのですから……」 「き、極めて不本意……相変わらず言葉にトゲがあるねえ……まあいい、よし、終わり!」 「課長に提出されるのですか? 課長は先程私に伝言を残して出張へと行かれましたよ」 「ええっ、マジかよ……伝言って何よ?」 「平成さんと一緒にこちらの方々に挨拶周りをしてこいと……」  令和がリストを平成に渡す。そのリストに目を通した平成が苦笑する。 「これはこれは……血の気しか感じさせない面子だな。まあいいや、さっそく行こうぜ」 「ど、どういう面子ですか?」  令和が平成の言葉に戸惑いながら、席から立ち上がった平成に続く。
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