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忘れ物を探しに来た女
土曜日の深夜、ちょうど眠りに入ろうかとしていたそんな時だった。
「ピンポーン」
「ん?」
うつろな目を半分ほど開け壁の方にゆっくりと首をねじる。薄暗い部屋の中でインターホンの画面だけがあかあかと浮かび上がっていた。
誰だよ、こんな時間に・・・・
ビビリな俺は自分を誤魔化すかのように舌打ちをした。どうしようか。そう考えているとまた「ピンポーン」と鳴った。近所迷惑。咄嗟にそれが頭を過ぎった。たが、このままじっとしておけばもう帰るかもしれない。いや、帰るだろう。そう願った。だが、またしても三度目の「ピンポーン」が鳴ってしまった。俺は慌てて飛び起きると画面に顔を近づけた。
外廊下のぼんやりとした明かりの下、黒っぽいパーカーを深めに被っててはっきりとは分からなかったが、首から肩のラインが女のような撫で肩をしていた。
イカツイ男じゃなくて助かった。俺は安
堵した。
「あのー、もう夜中なんですけどこんな時間に何か用ですか?」
少し間が開いた。
俺は聞こえなかったのかと思いもう一度同じ事を繰り返した。
また少し間が開いた。
「返してください・・・・」
「はあ?」
「返してください・・・・私のなんです」
「何を?」
「早く返してください・・・・」
「だから何を?」
ガチャガチャとドアノブから音がした。
俺は廊下のドアを開け玄関ドアを凝視した。
真っ暗で何も見えなかったが、またガチャガチャと音がした。俺は急いで玄関ドアに向かった。ノブを両手で掴んで動かせまいとありったけの力を込めた。
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