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コンビニの・・・・
俺はハッとした。いつだったか、出入り口ドアの前に女物の靴が揃えて置いてあった。忘れ物かと思って保管してたが、半年経っても持ち主が現れないので邪魔になって処分してしまった。
「あの靴なら処分した」
これで返せないと分かって消えてくれるかと思ったが、「それでは無い」と言われた。
「後は、後は・・・・えっと」
他に思い当たることは?
頭の中の走馬灯をグルグル高回転で回し続けた。
分からない。分からない、いったい何だよ!
俺は些細なことを片っ端から叫んだ。
「土砂降りの日の雑誌コーナーの傘?」
違う・・・・
「出入り口横にあったママチャリ?」
違う・・・・
「じゃあ、駐車場の隅に毎週月曜日忘れられてるゴミ袋か? あ、もしかして、お前が犯人なのか?」
それは私が犯人では無い・・・・
そう言われていよいよ分からなくなってきてパニクッてパニクッて何も浮かばなくなってきた。
女はヌメっとした声で言った。
彼氏から頼まれたのに。彼氏が楽しみにしていたのに。家に帰って気がついて直ぐに戻ってきたがもう何処にも見当たらなかった。何周も何周も店内をグルグルと探し回ったが、何処にも無かった。店員に聞いたが、「分からない」と言われた。さっきまでの店員とは違う。時計を見ると22時30分だった。店員に聞くと、22時で交代したと言った。
だから、お前だよ・・・・
早く返せよ・・・・
女は目を真っ赤にした泣き顔で少しずつ歩み寄ってきた。
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