蛙の大合唱

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「ロシア軍って鬼畜だよな。何で一般市民まで残虐非道の限りを尽くして殺戮しなくちゃならないんだ。同じ人間とは思えない。決して許されることではない!」  或る男子中学生が正義感に燃えて友達に言ったのだった。しかし、彼はクラス全員に配布されているタブレットのチャット欄に皆と同様にして一人の生徒を誹謗中傷する書き込みをして、その生徒を自殺に追い込んでしまった。  夏休みの或る日も彼は友達と池畔でカエルを獲っている時、持参したストローをカエルの肛門に差し込んでストローを咥え、息を吹き込んで行ってカエルの内臓を破裂させてしまった生徒に倣って皆が面白がってストローを借りてやり出すと、惨いと思ったが、やらないと、仲間外れにされると恐れて結局、皆と同様に惨いことをしてしまった。  で、人間っていざとなると、良心に背いていても自分の保身の為、或いは同調圧力に屈して全体主義に陥り、皆して残忍になってしまうものなのかと思い知った彼は、こんなことではいかんと思い立ち、何事も自分の倫理観に従って言動しなければならないと自戒した。  それからというもの彼は果敢に信念を実践躬行して行くと、皮肉にも孤立への道を辿ることとなった。今、あの池畔に立った彼は、雨にしっぽり濡れながら雨音を掻き消す蛙の大合唱を悲しくも羨ましくも思いながら涙して聴いている。と、蛙の世界では独りぼっちはいないし、仲間を殺したりもしないし、みんなこうして仲良く合唱してるんだよ!だから人間なんか辞めて蛙になったら!但、天敵は多いけどね!特に人間!という声が方々から聞こえて来る、そんな気がするのだった。  
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