ビスクドール ~『少し』『不思議な』骨董品屋~

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「勝手に人のワンちゃんの写真使ってんじゃねえよ」  話を遮られたヤクザ者も苛立っていた、っていうかこの人のペットなんだ。ギャップが怖い。 「いやあ、この子たち可愛いよねえ。いつも癒されててさ、今もつい出しちゃったよ」 「だろ? いやもうホント仕方ねえなあ! 可愛いのが悪いよなあ!」  さっきまで見せていた偽りの笑顔が本物の笑顔に変わる。  つまりデレデレ、分かり易すぎるくらいメロメロ。超が付くほどの愛犬家。  きっと多分この写真も無理やり置いていったものに違いない。  あ、ちょっと可愛いかも。  いつもの先生のペースに流されそうになったが、ヤクザ者が話の腰を折ってくれたおかげで本来の目的を思い出す。  呪いのビスクドールから女の子たちを助け出す。悠長に先生の話を聞いてる場合じゃない。 「先生、それより彼女たちを」  話を戻そうとした僕を先生が手で制止した。黙って聞けという訳だ、人の話に割って入って勝手すぎる、自己中にも程がある。 「呪い方は色々。でもまず必要なもの、相手の名前だね。そこに追加で相手の髪の毛や持ち物とか」 「これは当然、呪いの対象をより確実にするものだ。重要なのは明確に認識すること、名前はその最たるもの」 「認識すれば『』事だって出来る」 「さっきから何の話をしてるんですか、今はそれどころじゃ」 「うんうん、やっぱ分かんないよねえ」 「いいかい? よく見ときたまえ」  先生が人形の耳元で囁く。 「『七海』さん、『葵』さん、『』」  突如人形が小刻みに震えだし、見えない力で引っ張られるかのように二人の頭が姿を見せる。  そして徐々に、ゆっくりと、吐き出されるように全身が現れた。 「こういう事」 「分かったかい、だから簡単に名前を教えちゃいけないよ」
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