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「いいでしょう?」
お嬢様が、決まって外へ出たいというのは、人知れず天が涙を流す時間だった。
「さぁ、行きましょう」
真っ赤な雫避けが、暗闇の中で放つ存在感。まるで、歩む道を照らされているよう。
「ねぇ」
ふいに、歩む道が閉ざされる。くるりと回った雫避けを背景に、お嬢様の口が動くが。
「*****」
急に、号泣し出す天に、遮られてしまう。いつも、そうだ。
(あぁ、そうとも)
私ごときが、それを聴くことは許されないのだから。
「お嬢様、そろそろ、お戻りになられませんと」
そっと揺れる真っ赤な雫避けに、私は深く頭を下げた。
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