第一章 プロローグ

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第一章 プロローグ

「矢神さん、しっかりしてください。ホテルに着きましたよ」 「ん……」  男は、酷く酔っていた。意識は朦朧としている。  酒に強い方ではないのに、いつもよりも多くアルコールを摂取したからだ。  おぼつかない足取りで、一人の男に支えてもらいながら歩く。  酔っている男は、矢神史人(やがみあやと)、二八歳。  その矢神を支えているのは、バーで声を掛けてきた一人の男だった。  声を掛けたと言っても、男がバーに現れた時には既に酔い潰れていたのだが。  矢神は普段から真面目な男で、人の迷惑になることを嫌うタイプだった。だから、こんな風に人の世話になるというのは珍しいことだ。  これには理由があった。 ***
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