(第一章)告白

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(第一章)告白

 誰かの彼氏を好きになった事がありますか?  もし、その誰かがあなたの大切な人だったら‥  「私が恋人になってあげる。」  野々宮鈴音(スズネ)は、胸の高鳴りを抑えながら、山口裕貴(ヒロキ)に言った。  ここは街で一番大きな商業施設。  鈴音は学校帰りにここに寄って服やら雑貨やらを見るのが好きだった。  裕貴に会ったのはたまたま。  店内のベンチに座って悲しそうな顔で俯いてたから、声をかけてしまった。 裕貴は鈴音の姉、野々宮亜里沙(アリサ)の彼氏だ。  悲しそうな顔をしてるのはお姉ちゃんと喧嘩しているためだと思う。  理由は分からないけど2人は喧嘩していて、ここ一か月会っていない様子だった。  そんな大喧嘩は2人が付き合った6年間で初めての事だった。  裕貴の表情が2人の関係の深刻さを表していた。  裕貴は一瞬驚いた表情をしたが、 「本当にいいの?」 と聞き返した。  鈴音はコクンと頷いた。  どうしよう‥とうとう告白してしまった‥  ずっと舌の根に張り付いて離れなかった    言葉がこんなところで出てくるなんて。  彼はお姉ちゃんの恋人。  いけないのは分かってる。  でも彼が悲しそうな顔をしていたから、 黙って見ていられなかった。  そして、この夏が終わったら裕貴はアメリカに留学してしまう。  もう一生会えないかも知れない。  裕貴は鈴音の腕を掴むと賑やかな商業施設から人気の無い建物の影に連れて行った。  「この事は誰にもナイショだよ。 もちろんお姉さんにもね」  そう言って人差し指を鈴音の唇に当てた。  鈴音はオズオズと頷く。 「俺の言う通りにすればいいから。」  甘い吐息のような彼の言葉が鈴音の理性を溶かした。
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