優しさが足りないこの世界は。

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 この世界は、優しさというものが欠けてしまったのだろうか。これほど歪んだ世界になってしまったのだから、きっとそうなのだろう。この世界には優しさが足りない。だから、こうやって些細なことでニュースでは大きく取り上げられるし、それについて議論が持ち切りになるのだ。 「優しさが足りないんだろうな……」 「え?」 「何でもない」  私はまた数枚ポテトチップスを取ると、ソファから立ち上がり、自分の部屋へと向かう為に階段を上る。  おまじないなんて、信じないけれど。彼がこの呪いから立ち上がれるおまじないを。そして、この世界が少しでも優しくなるおまじないを。神様、どうか私にください。  ──ゴロゴロピッシャーンッ!  雷が落ちる音と共に、姉の甲高い叫び声が耳に届く。辺りの電気がパッと消え、姉の「停電!」という叫び声が聞こえた。停電か。願いが叶った。私はフッと笑うと、スマホのライトを頼りに仕方なく姉の所に戻る。姉は震えた様子で毛布をかぶりながら、私の顔を見て安堵の息を吐いた。 「良かった……」 「ビビり過ぎだよ」 「だって停電だよ? 怖いでしょ」 「すぐ収まるよ」  私はソファに座ると、真っ暗になったテレビの画面にニッコリ微笑む。外では雨音が相変わらず強く鳴っていた。ザーザー、と静かになることなく降り続けている。  ああ、何だかあの雷は神様からののような気がしてきた。この世界が少しでも優しくなれるように、いらないメディアの情報を消し、雷に怯える人々が支え合うように仕向けたんだ、きっと。  おまじないって呪いとも書くけど、やっぱり呪いだけじゃないんだな。幸せさえも運んでくれる。それを今、痛感した。
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