優しさが足りないこの世界は。

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 別にいいじゃないか、刺青が入っていても。顔が怖い人が全員中身まで怖いかと言われたら、別にそうじゃないじゃないか。有名なお笑いコンビで顔が怖い人はいるけれど、その人は別に怖いわけじゃないし、とても優しい人じゃないか。  人の悪いところは、他人を見た目で判断することだと思う。人は見た目だけで、決めつけちゃいけない。だって、可愛い人が中身まで可愛いとは限らないし、イケメンが全員心までイケメンとは限らないじゃないか。実際、私は今まで心までイケメンな人に会ったことが無い。  ザーザーと雨音が強まっていく。怒りと共鳴したように、どんどん強く。 「まるで、を掛けてるみたいだ」 「おまじない?」  姉がテレビのニュースを眺めながら言うと、私はこくりと頷いて言葉を反復する。テレビでは相変わらず、その刺青問題が取り上げられていて、ジャーナリストたちが議論していた。 「おまじないって、どうして?」 「おまじないって、漢字で書くとって書くんだって」 「へー、そうなんだ。不気味だねー」  姉は顔を強張らせて言うと、私も「そうだね」と相槌を打つ。 「この選手は、刺青のせいで非難されてるわけでしょ? 見ず知らずの赤の他人から。それってさ、呪いみたいだなって思わない?」 「ああ、確かに」  姉がリモコンを取って、別のチャンネルに変えると、相変わらずニュース番組が映し出されて、同じ内容で別のジャーナリストたちが議論し合っていた。また別のチャンネルに変えると、それもまた同じ。  姉は番組表を開くと、テレビ番組の一覧を確認した。だが、日曜の朝ということもあり、ほとんどのテレビ局でニュース番組しかやっていない。後は、料理番組とかだ。アニメもドラマもやっていない。 「おまじないってさ、悪い意味もあるの? てっきり良い意味のだと思ってたんだけど」 「悪い意味?」 「ほら、だって恋が叶うおまじないとかあるじゃない?」
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