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「ああ。まぁ、そういう良い意味もあるよ。でも、おまじないって不可思議なものの威力を借りて、災いや病気などを起こしたりするって意味もある」
「あらら、だから呪いか」
私はこくりと頷くと、姉は仕方がなく一番最初のニュース番組を付けると、ジャーナリストたちの議論を流しながら聞いていた。
ゴロゴロ、と不穏な音が聞こえ始めた。姉は外を見ると止みそうにない空を見て「停電にならないと良いなぁ」と呟く。むしろ停電になってくれ、と私は思った。そうしたらこんなくだらないニュースも見なくて済む。どんどん強まる雨音に、私は「もっとやれ!」と心の中で呼びかけた。
「この選手も可哀想だよねー」
いつの間にかテレビを向いていた姉は特にそうは思っていないようで、軽く言いながら息を吐く。私はそれを見て、姉とは別の心の籠った「うん」と言う相槌を打つと、同じく息を吐いた。
「幸せだった選手生命も、終わりかな」
「……幸せって何なんだろうね」
「そりゃ、大切な人に降りかかった雨に傘を差せることだって」
「いや、歌詞じゃなくて。単純に」
「あんた、いつからそんな哲学的な思考になったの?」
姉が呆れたような表情を浮かべると、私は首を小さく傾げ「そう?」と聞く。姉は何の躊躇もなく、思いっきり頷いた。哲学的思考であるとは思わなかった。ただ、ニュースで議論されている内容について考えると、こうなってしまう。これは人間の心理ではないのではと思うのだが。
私が思うに、幸せなんて、いくら考えても結局答えなんて無いと思う。ただそこには定義と概念だけがあって、中身なんて無い、ふわふわしたものなんだと。人間と同じだ。幸せは見た目だけじゃ、中身がぎゅっと詰まったものに見えるが、実際は中身なんて無いふわふわしたもの。人間もそうだ。見た目から考えた中身は、思っていたのと違う。そう考えると人間も幸せも、同じなんだなと思う。
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