ホワイトムスクの朝雨

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殆ど眠れなかった…。 私は真っ暗な部屋で時計が朝の時間になっているのを見て起きた。 明かりをつけると服を着替えて寝室を出る。 ダイニングに行くと上杉さんがキッチンで鼻歌を歌いながら朝食を作っている姿が見えた。 上杉さんは、眠れたのだろうか…。 私は上杉さんの背中を見てそう思った。 昨夜、上杉さんは私のベッドに枕を抱えて入って来た。 しかし、何も無かった。 枕を抱えてベッドに入って来た女性と何も無かったなんて話は、誰もしても信じてもらえない筈だ。 でも、何も無かった。 これは私が悪いのか、上杉さんが悪いのか…。 「あ、先生。おはようございます」 上杉さんは、私を見るといつもの様に微笑み、そう言った。 昨日の事など何も無かった様に振る舞う上杉さん。 「あ、おはようございます」 私もいつもの様に…を装い挨拶をしてダイニングテーブルに着いた。
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