ホワイトムスクの朝雨

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「あら、若い人ではないですよ…」 私は振り返り上杉さんを見る。 そうか…。 上杉さんは年上好きなんだ…。 私は顔を引き攣らせていた気がする。 「雨の朝が嫌いなのも。この人のせいなんですよね…」 私は上杉さんの元カレの話を聞きながら、タバコを取る。 「朝早くに迎えに来てもらって…。その日が大雨で、凄い長い事、傘を差して待ちました。おかげでビショビショになって。だから雨の日に待ち合わせはしない事にしたんです」 私は頷く。 「雨の日にデートはしないって事ですね…」 上杉さんはコーヒーを飲んでいる手を止める。 「デートをしないのではなく、待ち合わせをしないって事ですよ。相手は彼氏とは限りません」 なるほど…。 家まで迎えに来てもらうか、何処か時間を潰せる場所での待ち合わせという事になるな…。 「何か、雨の日に雨音を聞きながら待っていると、虚しくなるんですよね…。雨音に馬鹿にされている様な気になりますし…」 雨音に馬鹿にされている気になる…。 これもまた上杉さんらしい表現なのかもしれない。
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