ホワイトムスクの朝雨

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「あ…」 上杉さんはそれに気付いたのか、顔を伏せた。 そして勢いよく立ち上がる。 「さ、私、そろそろ帰ろうかな…」 と言い、自分のカップを持って書斎を出て行った。 私はじっと窓の外を見た。 タツタツと雨音が聞こえている。 時折吹く強い風にそのリズムが崩れるが、また元のリズムに戻る。 それを繰り返す。 その雨音が恋愛のそれに似ている気がした。 たまに崩れるリズム。 それがあるからこそ、いつものリズムを待つ自分が居る。 机の上のタバコを取り咥えた。 そしてマッチを擦ると火をつける。 「過去の恋愛か…」 私は無意識にそう呟く。 上杉さんの過去の恋愛を知りたい。 そう思った事は無く、多分これからも無い気がする。 しかし、この先の上杉さんを知りたい。 今の上杉さんを知りたい。 私はそう思う自分が居る事を認識した。
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