ホワイトムスクの朝雨

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「少し待って下さいね…。朝食出来ますから」 上杉さんはまた鼻歌を歌いながら背を向ける。 ふと、窓の外を見ると、雨が降っていた。 昨夜からそんな気配はしていた。 雨の香りと言うのだろうか。 そんなモノを感じていた気がする。 庭の木々を叩く雨音がしている。 「雨ですね…」 私は外を見ながら誰に言うでもなく口にした。 「そうなんですよね…。起きてびっくりでした。こんなに降るなんて思ってなかったので…」 上杉さんはそう言う。 確かに結構な降り方をしていて、庭のコンクリートや木々を叩く雨音も本降りのレベルだった。 「低気圧頭痛は大丈夫ですか…」 上杉さんはカウンターから身を乗り出す様にして私に訊く。
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