ホワイトムスクの朝雨

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私は、微笑み、 「私の場合は、雨が降り出すまでが酷くて、降り出すと治まるんですよ」 そう言うとタバコを手に取る。 「あら、じゃあ昨夜は辛かったんじゃないですか…」 昨夜…。 その言葉でまた昨夜の事を思い出した。 上杉さんの背中がベッドの中で私の背中に密着していた。 あの上杉さんの体温は今も感覚として残っている。 「ああ、どうでしたかね…。ビールも飲んだので」 ビールを飲んだから何だと言うのだ。 上杉さんは私に微笑み、うんうんと頷いていた。 「今日は和朝食ですけど、良いですか」 上杉さんは味噌汁の味見をしながら言った。 和朝食…。 もう長い事食べていない気がする。 私はタバコに火をつけて微笑んだ。
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