ホワイトムスクの朝雨

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確かにそうだ。 自分が食べるモノならば何でも良いと考えてしまうのが普通で、人に食べてもらうって事になると、その相手の事を考えながら作る。 それは根本的に違う気がする。 「なるほど…」 と私は箸を置いてお茶を飲む。 「何か、ありきたりな感想しか言えないのが申し訳ないですね」 すると上杉さんはクスクスと笑った。 「先生の事は、よく知ってますから、それで良いんですよ…。美味しいって言ってもらえたら伝わりますから」 私はまた箸を取り、 「上杉さんの手料理をマズイなんていう人はいないと思いますけど、そんな人にはレトルトのカレーでも食わせておけばいいんですよ」 私の言葉に上杉さんは声を上げて笑っていた。 「先生、レトルトのカレーに失礼ですよ」  
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