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マンションの五階にある私の部屋。
その出窓の硝子に雨粒が弾けてステキな音を奏でている。
雨音はとても心地良く、聴いていると深い眠りへと誘ってくれる。
そう……、こんな雨の降る夜にだけ感じることがある。
それは何時からだろう。もう覚えていない……。
リビングで寝ている愛猫の隣にいる何かを感じたのは。
私以外の人には懐かない臆病な愛猫。
なのに、どうしてかその何かには怯えることもなく、甘えるように目を細めて宙を見つめている。
しばらくすると私にもその何かが分かってきた。
その何かの姿がうっすらと瞳に映し出されるようになったから。
雨の降る夜にだけ訪れて、愛猫の隣に座って愛しそうにその身体を撫でているその何かを……。
邪気も悪意なく、得体の知れないような雰囲気も全く感じられない。
ただ、愛猫に会いに来ているだけ……。
私の愛猫が愛しいだけだと。
ねぇ、あなたは何者?
どうして雨の降る夜にだけ訪れるの?
尋ねたいことはたくさんあるけれど、今はもうどうでもいい。
私もあなたが来るのが待ち遠しくなったから。
あなたが来て、愛猫の嬉しそうな表情を見るのが楽しくなったから。
雨の降る日はそばにいてあげて。
雨の降る夜はあの猫のそばにいてあげて。
でも、ひとつだけお願いがあるの。
ねぇ、次は私のそばにいて。
ねぇ、次の雨の降る夜は私の隣にも来て……。
ねぇ……、雨の降る日はそばにいて……。
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