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背が高くスレンダーな男の人だった。目深に帽子をかぶり、メガネとマスクをしているので顔はわからない。この暑いのにブルーのスーツ姿。
帽子にスーツって……
でもあれ? この色のスーツ推しのカラーに似てるかも。よく見ると背格好が似てる。
……そんな、まさかね?
冷蔵ケースの飲み物に集中しているのかその人は、立ったまま動かない。
……あぁ、良かった。聞かれなかったみたい。夏葉が安心して胸を撫で下ろしたのもつかの間、
「君、帰ったらシュワシュワ飲むんだ?? いいね」と、話しかけられた。
やっぱり、聞かれてたっ!!
夏葉はさらに真っ赤になった。ところが、そんな夏葉に構わずその人は、
「オレさ、シュワシュワ飲みたいんだけど、お金持ってなくて」
と、ボソリとつぶやいた。
「……え?」
さらに、何やらボソボソとひとりごとをつぶやいている。
「って言うか、なんでここにいるのかわからない…… でも、喉が無性に渇いて……」
その人の声は小さくて夏葉にはよく聞き取れなかった。
「はぁぁぁ……」
大きなため息までついている。余程困っているようだ。
夏葉は他人事と思えず、
「あの、こっちの500ミリで良かったらごちそうしますよ」と、言った。その人は震える声で、
「い、いいの? あ、ありがとう……」
涙ぐんでいるように見える。
そんなに喉が渇いていたんだね。喉が渇いている時はシュワシュワコーラに限るよ。
夏葉はさっそく、シュワシュワコーラの500ミリをカゴに追加した。
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