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夏葉が後ろを気にしてそっと振り返ると、コンビニから出てきた女達がコソコソ言いながらついて来ている。
「あの人達しつこいですね」
「迷惑かけてごめん。実はさ、信じられないと思うんだけど、自分が誰なのか思い出せないんだ」
「……え?」
夏葉には言われた意味がわからなかった。
「あの、それはどう言う事ですか?」
「うーん、そのままの意味。気づいたらコンビニの飲料棚の前に立ってた。財布も持たずに」
さっきの場所に?
「たださ、オレ無性に喉が渇いてるんだ」
「それなら、取り敢えずシュワシュワしましょ! シュワシュワしたら記憶が戻るかも??」
夏葉とブルースーツの人は夏葉の住むマンションまで歩いた。エントランスに素早く駆け込みオートロックを開けて中に入る。
ここまで来ればあの人達もついてこられないから諦めるだろう。
上階から降りてきたエレベーターに乗り、
「ここの六階がウチです」
「突然行って親御さんに心配されない?」
「うーん、多分。お母さんいるけど大丈夫だと思う」
「なんだか悪いね…… 名前聞いていい?」
「あっ、なつはです。和光夏葉」
「夏葉ちゃん、背が高いね」
「小学生からバスケやってます」
「今、高校生?」
「はい。二年生です」
「もしかして夏生まれ?」
「わかります? 今月誕生日で17歳になります」
「おめでとう」
「ありがとうございます!!」
声がるいるいに似ている気がする!! るいるいにお祝いを言ってもらえたようですごく嬉しい!
エレベーターが六階に着いた。
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