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響との出会いは高校の時の先輩に無理やり参加させられた、大学の新歓コンパだった。
「いいから来いよ! 可愛い子いっぱいいるから!」
強引に手を引かれ、陰気な暖簾がさがる扉を潜った先に、響は同じ学部と思われる女子達と座って笑っていた。
「なあ? けっこう可愛い子揃ってるだろ? な? なあ?」
その時、すでに先輩の言葉はもう僕の耳には届いていなかった。
恋。
世の中には特定の人に夢中になってしまうという『恋』という言葉が存在する。
たおやかな容姿。
甘やかな笑い声。
周囲を優しく包みこむような趣。
それはひとえに、彼女の色香につかまってしまった状態から抜け出せなくなっている。
「ごめん! コイツがさ~面倒くさがって行こうとしないから遅れちゃったよ」
先輩はそう言って、僕の肩を強く前に押すと、こちらにゆっくり顔を向ける響。
その時始めて、僕の視線は響の視線と結んだ。
「初めまして」と言って響はニッコリと笑った。
故に僕はその瞬間から、響の魅力に心を奪われていたようだっだ。
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