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ただいまと、誰もいない部屋に 帰る。
妻が亡くなってから半年。 もういい加減慣れなくちゃなと 思いながらつい言ってしまう。
コンビニ飯を机に置いて こんなものばかり食べてたらあいつは怒るだろうなと 考えながら買ってきたビールをベランダで飲みながら夜の街を遠くから眺めていると あいつと過ごした時間がふいによみがえる。 おかえりと後ろから声が聞こえた。
振り返ると亡き妻が 洗濯物を畳みながら だらしないわねと微笑んでいる。
泣きながらただいまという自分は言いたいことがたくさんありすぎて何も言えないでいると 妻が一言だけ、
『あなたには寂しい思いをさせてごめんね』と
それはこっちの台詞だと何度も謝る自分に、 妻が、『変なの』と笑う。
その日は夜明けまで懐かしい話をした。 気づいたら朝で、妻は部屋にはいなかった。
そうだ、あいつはもう… 畳まれた洗濯物に気づく。帰ってきてたのか…』
久しぶりに墓参りに行こうと決めた。
あいつの好きだった花を買っていこう。
その日は、よく晴れた青空だった。
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