序章

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 ──?  さっきまで電車に乗って大学に向かっていたはず。    目の前にはうっすら霞がかった、どこまでも続く美しい花畑。空は澄みきったピンク色だった。 「えーっと、橋本喬香さん?」  女性のような声が聞こえたかと思うと、その主が目の前に現れた。  ──神様だ!   一目で分かった。神様だ! 「そう。私はあなたの世界で神と呼ばれる存在。分かりやすいよう、あなたの中の神様のイメージを具現化してみたわ。アジアの命を預かる神が私。……ごめんなさいね。あなたの命の壺を誤って割ってしまったの」 「ん? なんのことですか」 「あなたは死んでしまったの」 「えっ!?」 「ここはあなたの世界で言う天国への入り口」 「うそ……困ります! まだ死ねません! 母を残して死ねません!」 「大丈夫だから落ちついて? 今から生き返らせるからね」 「母にはわたししかいないんです! 母の元に帰らなきゃ! 帰して下さい」 「ちょっと暴れないで、今から戻すから! あなたの魂が揺れて、動かしにくいのよ!」 「あっ……ちょっと! だから、暴れないで! ……落ち着いて! あっ……! やっべ……時代間違えた……」
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