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<1・始。>
次の企画はエレベーターだから。そう言われた時、私は思った。いくらなんでもネタが使い古されている、と。
「まっちゃん……もう少し斬新なのない?今時異世界エレベーターはないって」
ひと昔前に、異世界へ行けるエレベーターという都市伝説が流行したのはわかっている。しかし、それが“ひと昔前”であるのが大問題なのだ。既にいくつも実験動画は上がっているし、その大半はヤラセか何も起きないかの二択だった。どっちにしても、今更視聴者の興味を引けるようなネタではない。みんなとっくに飽き飽きしてしまっているだろう。
オカルトユーチューバートリオとして数年前に動画投稿を始めた私、アイナこと西岡愛奈。そして高校の時の友人と後輩である、まっちゃんこと江崎真里菜と、コンコンこと田中琴音。高校時代にオカルト研究会に所属し、ちょっとした怪奇現象なんかも体験していたこともあって少しばかり調子に乗っていたのだった。自分たち三人が揃うと怖い出来事が起きやすい。自分達の誰かがきっとそういうものを引き寄せやすい体質なのだろう――それならば三人でオカルト系ユーチューバーになればがっぽり儲けることができるはずだ、と。
それで、高校の終わりからちょこちょこと取材を始めて、大学生になった今の今まで三人仲良く動画投稿を続けているというわけである。今回の話はつまり、次の動画投稿のネタを何にするか?という会議の中で出たものだった。
ユーチューバーはけして楽に稼げる仕事ではない。気づいたのは自分達が実際にデビューしてからのことである。アレコレ工夫して視聴者の興味を引こうと躍起になっているのに、初投稿動画は二桁回るのが精々。少しずつ人気が出てきた今でさえ、半年かけて一万再生行けばいい方という有様だった。
本気でこれを職業にしたいと思うのならば、そろそろ一発当てなければいけない。私はともかく、あとの二人がまともな就職活動なんてする気がないのは明白である。そろそろ派手な面白い企画を、と焦る気持ちはわからないでもないが。
「アタシだってそんくらいわかってるってー」
真里菜はぷう、と頬を膨らませて言った。
「昔ながらの異世界エレベーターなんてやろうと思ってないっつーの。聞いたのは全然別件のネタだからー」
「別件ねえ」
「そうよ。とりあえずアタシの話聞いてから判断してくれても遅くないと思うわけ。おけ?」
「まあ、話聞くくらいなら」
現在、集まっているのは琴音の部屋である。一つ年下の彼女だけが、現在一人暮らしをしてるのだ。ゆえに、作戦会議も彼女の部屋ですることが多かった。
「結構悪くないと思いますよ、愛奈先輩」
その琴音は、私と真里菜の前にお茶を用意しながらにこにこと笑う。いつもぽやっとしていて能天気な彼女は、自分達にとってはある意味マスコット的な癒しキャラった。
「私もざっくり聞いたけど、なかなか面白かったですもん」
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