<1・始。>

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 勿論、キャッチコピーとサムネにも工夫が必要。視聴者を釣る工夫をしつつ、誇大広告にならないようにしなければいけない。実際に自分達で動画投稿をしてみて初めて分かったことだった。  視聴者ニーズには常にアンテナを張っていなければいけない。流行に敏感に、かつ他の動画投稿者と同じことばかりやっていてもつまらない。それで、ひとまずリクエストを募集するようなことはしていたわけだが。 「今回は、ある特定の場所にあるエレベーターを調べるってな話なわけ」  私達の実質的なリーダーである真里菜が、にやにやと笑いながら言う。 「埼玉のとあるボロボロの団地に、エレベーターがあんのね。それがいわくつきだって話題になってるっぽいのよ。だから異世界に行けるエレベーターとは完全に別件」 「リクエスト来てたの?」 「うん。アタシのメールに直接。そこの住人なんだってさ。怖いから自分はそのエレベーターそのものを使えないんだって。だから調べて欲しいんだって。地元じゃ結構有名らしいよ、幽霊が出るって」  まあ、ありがちな話である。ただ真里菜がここまで興味を引かれるからには、ただ幽霊が出るだけのエレベーターでは済まなさそうだが。 「そうやって幽霊が出ます!絶対出ます!みたいなところ散々取材したけど、今までヒットしたことほぼないじゃん」  私はやや呆れて言う。 「まっちゃんがそこまで言うからには、マジな情報があるんでしょーね?」 「モチ。幽霊の目撃情報もそうなんだけど……そのエレベーターが呪われてるっていうのは本当にありそうなのよ。そのエレベーター、不可解な事故が多発してるんだって」 「え、欠陥があるってこと?」  それは、別の意味で困る。  エレベーターの事故は、昔から世界各国で起きているものだ。ドアに挟まれたり、落下したり、閉じ込められたり。大抵どの事故も被害者が凄惨なことになるものだから、その手の事故を取り上げた動画などを発見しても絶対に開かないようにしているのである。  そもそも、私は子供の頃からエレベーターが苦手だった。今でこそなんとか一人で乗れるようになったが、小さな頃は閉じ込められるんじゃないかと怖くてたまらなかった記憶があるのである。まあ、それは小学生の時友人と一緒に乗った時、その友人がふざけてエレベーターでジャンプしまくってセンサーを作動させ、エレベーターを停止させるという事件を起こしたのも理由であったが。  あの時は本気で怖かったし、その友人を心底恨んだものである。地震起こしちゃったー!とへらへら笑っていた顔を何度ぶん殴ってやりたいと思ったことか。すぐに救出されたのに、閉じ込められていた数十分がえらい長く感じたのをよく覚えているのである。 「それが、欠陥なんかないのに事故が起きまくるっていうのよ」  そんな私の心をよそに、真里菜はどこまでも楽しそうだ。
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