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「どうして、貴方がいると雨ばかり降るの? じめじめしてうっとうしいし、どこにも遊びに行けないし、つまらない」
つまらないなんて言われたって知らないわよと私は叫びそうになる気持ちをグッと奥歯を噛み締めることで我慢した。
高校の文化祭、せっかくみんなで準備して徹夜して仕上げたのに当日はずーっと雨だった。中学生の頃の体育祭、みんなで一丸になって練習したのに、体育祭は雨で延期、風邪を引いて欠席したら、延期した日は快晴だった。小学生の頃、楽しみだった遠足が雨で中止になってみんなでドッチボールをした。
いつの間にか私がみんなの中から消えていた。ずっと一人で雨空を見上げることが増えた。どうして私が何かに期待したり、楽しみにしたり雨が降るのかしら? いつも私のいないところでコソコソと囁き声が聞こえてくる。
「あの子は呼ばないほうがいいよ」
「だねー、雨女だし、靴も服もお気に入りのやつ汚れたらマジ勘弁」
「そのくせ私は何も悪くないわよって顔してるのが、ムカツク」
「迷惑かけているって自覚ないのかな?」
囁き声がどんどん大きくなってきて私は耳を閉じて走り出した。私だって雨は嫌いよ。いつも濡れるせいでお気に入りの服を見ても買えないし、靴に水が入るとぐちゃぐちゃ嫌な音がする。あと気持ち悪い!! 傘を買ってもすぐに盗まれる。どこにも遊びに行けないのは私だって辛いわよ!!
嫌だ。嫌だ。嫌だ。私だってみんなと同じようになりたいのになれないのが苦しい。私だけが違うと思うと辛い。仲間外れは嫌だ。
「あ、あああぁあぁーーーーーーーーんん!!!!」
雨が降っていれば涙だって打ち消してくれる。誰も聞いていないし、泣いたってバレないわよ。まぁ、バレたところでまた、雨女がって笑われるだけじゃない。
「風邪、引くよ」
泣いてる私にそっと傘が差し出された。雨が遮られ、泣き顔を見られるのが恥ずかしい。ごしごしと強引に目元をこすると、傘を差し出した男がポケットからハンカチを取り出して、
「どうぞ。使って」
「いらないわよ!!」
どんっと振り払ったハンカチが地面に落ちた。すぐに汚れて濡れていくハンカチ。あぁ、またやってしまった怒ると感情の抑制ができない。嫌な気持ちにさせたかもしれない。罪悪感にいっぱいになると。
人差し指で目元を拭われた。ビクッと驚いて倒れそうになって男の手が私の手を繋いで倒れないですんだ。
男の顔はよく見えないのに、繋がれた手が熱くて、そういえば男の子と手を繋いだのも初めてだと気がつく。
人並みに青春を送りたかった。人並みに恋をしてみたかった。人並みに幸せになりたかった。私はいつか諦めていた感情がふつふつと胸に沸き上がってくる。
「大丈夫?」
「へ、平気よ!! 気安く触らないで!!」
「ほら、見てみなよ。雨が止んだよ」
「え?」
「これっ雨降って地固まるってやつかな?」
男がニコッと笑った。
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