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ホント、クソみたいな人生
夜凪楓として生きて16年。
ごく普通の家庭に生まれて、ごく普通の生活をしてきて、どこにでもいる女子高生。
クラスではいわゆる「陽キャ」のグループと絡んでいて人間関係も良好、それなりにメイクもネイルもして髪まで毎日巻いてる。少しばかり校則違反なんかもしちゃったりして。
でも、なんだか
「息苦しい。」
とある廃墟の屋上。手すりをつかみながら小さくポツリとこぼした。
ぐっと前屈みになり下を見るとまるでブラックホール。辺りが暗くなり始めており、どこから地面なのかわからない。
別に死ぬつもりはない。
けれど生きるのも疲れた。
わけもなく涙が頬を伝った。
「ちょっと待ってよ。」
背後から突然の声。心臓が痛むくらいドキリとした。
勢いよく振り返ると、暗がりでもわかるくらいの鋭い目つきをした同年代の男の子。
長めの前髪は左耳に掛け、ピンで留められており
ついでに黒マスクで怖い雰囲気が漂う。
パーカーのポケットに両手を突っ込み、不機嫌だと言わんばかりにつかつかと向かってくる。
「あ、あの私……」
「そんなに死にたいんならさぁ、残りの命分けてよ。」
「…………え?」
なにを言われたのか、理解が追いつかなかった。
命を?分ける?私が?
もしかして別の意味で怖い人なのだろうか。犯罪に巻き込まれる?売られる?
足がコンクリートで固められたかのように動かない。
ここから逃げないと、と脳が猛烈に信号を送り続け、ようやく剥がれた。
「なんて____」
「ごめんなさい!命はあげられないです!」
それだけを言い残し、全速力で廃墟を抜けた。
ある意味、心霊体験よりも恐ろしい体験をした日だった。
◇◆◇◆◇◆
「そこまで怖がって逃げることないじゃん。……夜凪さんでも、死にたくなることってあるんだ。」
先程のパーカー男子こと桐島桜は手すりにもたれかかり、夜空に向かってマイルドセブンをふかした。
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