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「なんで、いきなり『別れよう』なんて。いつから、そう思ってたの? 俺、嫌われるようなことした? それとも他に好きな人ができた?」
「私が? なんで? 好きな人ができたのは、そっちでしょう?」
「俺が? いつ!?」
「見たもの……、どうして浮気なんかしたの?」
「俺が、浮気? したことないってば!!」
「じゃあ、誰なの? あなたの部屋にいた女の子。 白いワンピースを着た、髪の長い赤いハイヒールの子。大学の同級生? 後輩? あなたにキスしてたじゃない!!」
「待って? ねえ、……知らないんだけど……、何それ?」
彼の目が見開き、縋るように歪む。
「最近、眠ったあと、全然目が覚めなくてグッスリでさ。そのせいで昼まで寝ちゃって大学に行けないこともあるし、だけど体はなんだかすごく疲れてて……。それで、さ……、枕もとに長い髪の毛が落ちてたことがあって……」
「え?」
「友達が俺を写した写真の背後に必ずといっていいほど白いワンピースの女が写ってて……」
「待って、ねえ、それって!」
そういえばあの時彼はぐっすりと眠っているようだった。
私の気配にも彼女にキスされたことにも気づかないほどぐっすりと。
「もう一度ちゃんと話そう。俺、絶対に浮気なんかしてないから!!」
モニター越しでも、真剣な眼差しを見れば嘘なんか言っていないのはわかった。
私のことが好きだって、伝わってくる。
私もまだあなたが大好きなの。
大きなワンコみたいで素直で優しくて可愛い。
もう一度信じさせて?
「うん、わかった。今、開けるね……、私もきちんと話がしたい」
ようやくモニターの中で微笑んだ彼、私もその表情に安心してインターホンを切ろうとした瞬間。
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