17人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の背後、ゆらりとまるで貼り付く影のように現れた。
白いワンピースに髪の長い女。
あの時の、女が彼の肩越しにニヤリと笑っている。
いつからそこにいたの!?
心臓が耳の中や、身体中の全てに存在するように、大きく早く、まるで警告音のようにドッドッドッドと鳴り出し、呼吸がうまくできない。
その真っ黒な瞳には光などなく、吸い込まれそうな恐怖を感じた。
逃げて、ねえ、逃げて――。
「どうしたの?」
無言になった私に彼が首を傾げている。
「う、後ろっ」
「え?」
「逃げて、早く!!」
金縛りのようになった私の声が出た時には、彼の首に縄をかけた女。
ギリギリと締め上げられて、苦悶の表情に歪んだ彼は、沈み込むようにモニターから消えた。
「うちのワンコがお邪魔をしました」
嬉しそうに笑ってペコリと私に頭を下げた女はそのままモニターから消えた。
這いつくばるようにして、ようやく辿り着いた玄関のスコープ越しにはもう誰もいない。
震える指先でチェーンをして少しだけ開けたドアの向こう。
ズルッズルッズルッ、カツンカツンとヒールが遠ざかる足音がした。
――犬系彼氏――
最初のコメントを投稿しよう!