犬系彼氏

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「帰って、今何時だと思ってるの?」  時計の針は深夜二時。  鳴りやまないインターホン、モニターに映っていたのは、今日別れたはずの元彼。 「開けて?」 「嫌よ、新しい彼女が家で待ってんでしょ」 「そんなんいないってば! なんなの? 一体!」  モニター越しに、泣きだしそうなふくれっ面を見せる年下男。  その顔も可愛いって思ってた、今日までは。 ――日中のこと。  彼の二十歳の誕生日をサプライズしようと、合鍵で明けた彼の部屋。  この時間だと大学に行ってるはずだから、今のうちに支度をして、そう思った私の目に飛び込んできたのは。  赤いハイヒール、だった。  彼のスニーカーの横に、行儀よく仲良く並んでいる、アンクルストラップつきの華奢なヒールに嫌な予感が走る。  物音一つしない彼の部屋、玄関前のキッチンに静かに荷物を置き、開けたドアの先はリビング兼寝室。  遮光カーテンが引いてあり、昼間だというのに薄暗い。  やっと目が慣れた私が見たものは……。
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