愛してなんかいなかった

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愛してなんかいなかった

 彼は俺を愛してなんかいない。  そう、俺と俊矢は正式な恋人じゃない。第二の性と呼ばれるダイナミクスの衝動を抑えるための、ただの利害関係。Domの俺は支配することで、Subの俊矢は支配されることで、お互いの理性を保っている。  だが俺は、そんな理由だけで俊矢に触れているんじゃない。  支配欲とは、独占欲の表れだ。少なくとも、俺はそう信じている。好きだからこそ、その人のすべてを知りたい、手に入れたい、制御したい。それを愛と呼ぶのは、はたして愚かなことだろうか。 「俊矢、まだ”待て”だ。”待て”」  ベッドに腰掛けた俺の目の前で、床に座った俊矢が俺を見上げていた。いや、正確に言えば俺の股間の怒張だけれど。華奢な体には何も身に纏ってはおらず、カールした茶色の髪がどこかトイプードルを思わせた。  そんな俊矢が、大きな体躯を利用して威圧感たっぷりに「待て」と発するたびに体を震わせる。それはSub特有の本能によるものなのか、それとも俺の怒張がもたらす快感を期待したものなのか。どちらにしても嬉しいが、できれば後者であるとなお嬉しい。 「孝基……、もう、欲しい」 「そんなに欲しいのか? 悪い子だ。お仕置きが必要かな?」  お仕置き。その言葉で、俊矢は唇を強く結んだ。しかしその目は、甘い期待を孕んだように何かがちらついている。俺個人としてはお仕置きというのはあまり好きではないけれど、俊矢が喜ぶならとあえてこの言葉を使う。だから、俺のお仕置きはとても甘いのだ。まるで、恋人にでもするように甘ったるい行為。 「ほら、”いやらしくおねだりして”ごらん」 「あうっ……」  俊矢はようやく俺の怒張から目を離すと、もう少し上にある俺の目を見つめる。紅潮した頬と潤んだ眼が、俊矢の興奮が限界であることを伝えている。そのおかげか、俊矢は素直におねだりを口にした。 「お、お願いします……。俺の……、お、おまんこ、を……。孝基のおちんちんで、いっぱいにしてください」  恥ずかしさから息を乱し、途切れ途切れではあるが俊矢ははっきりと言い切る。その姿が愛おしくて、俺はその頭をゆっくりと撫でた。ご褒美というよりは、俺がしたかっただけなのだが。それでも俊矢の目はうっとりと蕩けたのだ。
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