愛してなんかいなかった

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「じゃあ、”俊矢のおまんこを見せて”」  そう命令すれば、俊矢はゆっくりと俺に背を向ける。かと思えば、尻を高く上げた格好をとった。そして自身の尻たぶを左右に割ると、色の変わった奥の窄まりを俺に見せつけた。  俊矢が俺のことを、恋人として見てくれないことはわかっていた。俊矢には本命の彼女がいることも。まぁ、まだ告白すらしてないけれど。だけどそれでも、何かしらの特別な感情を抱いてくれていると思っていたのだ。ただの都合のいい男じゃない。セフレ以上の関係を築いてきたと。それなのに……。 『本命の彼女と付き合うことになった。もう連絡してこないで』]  「ありがとう」も「さようなら」も「ごめん」もない、自分勝手な文章。それだけでも腹が立つのに、僕は最後の一文に体が震えた。  俊矢とのメッセージを遡ってみても、僕から連絡を取ったことは一度もない。セフレである自分の立場をよくわかっていたからだ。それに内容はいつも「したくなった」「いまどこ」という最低なものばかり。  これじゃあまるで、僕がしつこく俊矢に纏わりついていたかのような言い草じゃないか! 「くそっ!」  思わずスマホを投げつけると、鈍い音がした。きっと壁に傷がついただろう。しかし今の僕に、そんなことを気にしている余裕はなかった。必死に枕を嚙み、叫び声を漏らすまいと唸る。  復讐がしたい。その言葉が僕の頭を支配する。俊矢を刺すか、それとも女を嬲るか。血が上った頭では考えがうまく纏まりはしない。しかし決意だけが心臓を燃え上がらせるように駆り立てていた。
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