序章。

6/7
前へ
/7ページ
次へ
神界フェイズ②【最果てのラスカル】〜本人居ないところでバラす黒歴史は〜 『……ジ◯リ、だったね』 『◯ブリでしたね、確かに……っていや、そうじゃなくて。自分の名前すら名乗りませんでしたよ?』 『うん、そだね。まあ、彼女自身より彼女について詳しい我々です、ごめんなさい。名前を聞き忘れたわ』 『ダメダメですね。マスターも大概……』 『それでも、あの語彙力低下は、ないよね。圧倒されて名前聞き忘れるのも無理ないでしょ。まあもちっと神様らしく振る舞えんかったものかね〜彼女。僕の中の駄目女神認定、最速記録更新だよ?』 『マスターがそれを言いますか、糞創造神 (代行)。まあもはや代行でも荒人神でもなくなるわけですし、私も今後、口を酸っぱくして最高神はかくあるべきとお説教を垂れることもなくなると思えば……』 『今後は彼女に、そのご高説をとくとくとタレることになるかも、知れないけどね』 『彼女なら、まあ一度や二度ほど、特別講義を私自ら受け持てば大丈夫でしょう。先程の接続で、彼女の優秀さはよく理解できましたから。性格の難についてはまあ、追々と』 『さすがは、正義と公正の女神。タダで神力の譲渡は行わない。接続ついでにきっちりと、情報収集は欠かさない、と言うわけだね』 『……何やら含みのある御言葉ですが、まあ当然の措置です。彼女が抜擢された経緯を考えれば、此方としても充分な用意をして然るべきでしょう。なんせあの【荒ぶる混沌の女帝】なのでしょう?悪名高き……』 『……三千世界における最悪の悪鬼、三大魔嬢。最近一人増えて四大魔嬢か、その内の一人、混沌の女帝エカテリーネ。それは彼女の数ある前世一つ、だよ』 『雷神の愛娘【ネイア】始源の焔を統べる爆炎の魔女【アビー・セイラム】つい最近加わり、女性であったと言うこと以外、神霊庁の諜報機関が何の情報も掴めていない【無銘】。それに彼女を加えた四大魔嬢。一つの世界を完全破壊してなお、余りある脅威の絶対封印指定である大災厄。その様なものを、よく創造神に迎え入れようと考えたものですね、マスター』 『……問題児を中堅クラスのポストで燻らせておくより、いっそトップに据えてしまった方が始末がいいと思わないかい?【私】もね、一応管理者としてただ【面白そう】だからと言って、そんな無茶なことをするわけじゃないよ。成算は充分考慮してのことだよ』 『私はマスターの共犯者ですし、その計画に賛同したものの一人として理解しています。そして彼女なら、我々の悲願たるアカシックレコードとの完全同期。世界樹への再接続、完全再起動を成し得る最高の【器】だと、確信します。いえ、確信しました』 『君にそこまで言わせるのか。凄いことだね。じゃあその信頼に対して、僕からとっておきの情報を開示しよう。これはアカシックレコードの特級秘匿情報、漏洩すれば即座に漏らした当事者のみならず、それと接触した可能性のあるものを属する【世界】ごと即時抹消、虫の一匹に至るまでの魂魄全てを無にする事まで認められている、特記事項だ』 『恐ろしいですね、聞くべきではないと私の危機管理能力が全身に告げています。が、私は共犯者、拝聴致しましょう。これでも一応、正義を為すために悪を働く覚悟は、出来ているつもりですので』 『……内容そのものは別に大したことじゃないよ。君の覚悟に見合うほどには、ね。ただ単にそれら四大魔嬢の【尊称】は、全てたった一人の【ヒト】に捧げられた、名前だってことだよ』 『転生の時間軸は、過去・現在・未来と言う因果律の流れに左右されない。なるほど彼女もまた【ヒトの魂魄によるアカシックレコードへの直接ダイブ、接続実験】、俗称一億年ボタンの被験者の一人、だったと言うわけですね』 四大魔嬢はその実験開始後、唐突に三千世界に顕現した。しかもアカシックレコードの観測によれば、実験開始以前と以後、過去と未来の区別なく、事象は書き換えられ、因果律は大きく捻れ歪みが発生。結果、数多の世界が消滅、或いは半壊の憂き目にあい以降、神界における世界に揺らぎをもたらす可能性のある研究、実験の全てが中止、或いは凍結するに至った。それが全て、彼女に起因する…… 『……直近の前世では、実験が行われていた世界線の一つで、ごく無難な生涯を終えたと言う情報しか持っていませんでしたが』 『彼女の犯した行為、その他【生前】の情報を隠匿するのに、かなり骨が折れたよ。いくら【創造神】の再誕が、我々の悲願であり急務であったとはいえ、その顕現プロセスが全く不明のまま人(神)工的に生み出そうと試みるなど、全界に対する極めて悪質な、冒涜の極みだろうからね……』 『そして、その試みは今、実を結びつつあると』 『一見すると、そうだね。まあ蓋を開いてみたら、順調に見えて実は最悪の結末に向かっている、なんてこともあり得るけどね』 『…………』 『【私】もね、生前はまあ色々な世界線をヒトの身のまま、勝手気ままに渡り歩いたものだったけど、その令名も悪名も業績・功績、英雄譚の全てを以ってしても、彼女の足元にも及ばない。正直なところ、怖くてね。彼女が完全覚醒を果たし、暴走してしまった時。【私】に果たして、それを制御出来るだけの力があるか……』 『確かに、不安を感じざるを得ませんね。私などにはとても、想像することすら埒外です。……まあ、それでも影響力の云々抜きにして、ただ単なる悪名だけなら、マスターも充分、四大魔嬢に対抗するに余りあるしょうよ。そうでしょう?何せマスターは【神殺しの黒き獣】、なのですから……』 『……ずいぶんと、懐かしい二つ名で僕を呼んでくれたものだね、女神アストライア。君も興味があるのかい?……【我の】大好物を、如何にしてスマート&エレガントに、カ・ミ・コ・ロ・ス、のかを。その大好物が、どうなるかについて……』 『失言でした。お忘れください、マイ・マスター』 『うん、フレンドリーに愛称を呼び合うのはいいとして、何が地雷源になるのかは、お互いに気をつけたほうがいいよね……ああ、愛称で思い出したんだけどさ、君の先輩。先代の女神アストライアはどうしてるか、知ってる?』 『……ああ、ジャンヌ先輩ですか。唐突に志願して地上神勤務に移ったあと、ずいぶん勝手気ままに楽しくやっている様ですね。なんだか【タガ】が外れたみたいに……ワタシニムリヤリコイツヲオシツケヤガッテ……』 『こないだのさ、アレはサイコーだったね〜。【疾風怒涛の神風美少女女神、貴女の親愛なる魔法少女!ジャンヌ!背景ドッカ〜ん(TNT火薬)って。アレもう完全に受肉しちゃってるでしょ?(笑)』 『……所属世界に完全に魂魄も癒着しちゃってますからね。ヒトの輪廻に取り込まれた以上、当分神界への復帰は、望めませんね……やれやれ』 ……本人のいないところでの、黒歴史暴露大会は、終わらない。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加