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やっぱり、さすがに結婚前の男女が、一部屋で過ごすというのは健全ではないよね…。
私は、母の腕を引いてこっそり耳打ちした。
「お、お母さん!こ、これ、だ、だめだよ!私たち夫婦じゃないんだし。」
「あら…、そっか。それもそうね。私ったら勘違いしてたわ。ごめんなさいね。じゃ、玖実は隣の部屋にしましょうか。普段璃玖たちが泊まるのに使ってる部屋だから、虎太郎の着替えとかオムツとかあるけど気にしないで。布団、移すわね。」
母は焦り笑いと共に、布団を一組隣の部屋に移動した。
私は祥平の元へ駆け寄り、事情を説明した。
「あ、あのさ、さすがに一部屋で、しかも布団もピッタリ隣同士ってのはマズいよねって…。わ、私、隣の部屋に移ることになったから。へ、変に思わないでね。決して祥平のことが嫌なわけではなくて…。」
すると祥平は柔らかく微笑んだ。
「だよな。さすがにあれはマズいだろ。大丈夫、これでいいんだよ。」
祥平の反応に、私はホッとした。
翌朝。私たちは、私の両親と一緒に朝食を摂り、実家を出発するために荷物をまとめていた。ふと、祥平が口を開いた。
「改めて、玖実のご両親、めっちゃいい人だって思った。ここも凄く落ち着くし、お兄さん夫婦も優しくて、虎太郎君にも会えたし、ホントいい仙台旅行になったよ。ありがとう。」
祥平が私の家族を絶賛してくれたことが、とても嬉しかった。
「ありがとう。良かった。ホントは、せっかくの仙台旅行なのにウチに泊まるのって嫌じゃないかなーって心配だったんだけど、そう言って貰えると嬉しい。結局、ウチのお母さんがリフォームした我が家をお披露目したかっただけだったんだよね。そんなのに付き合わせてごめんね。」
祥平は微笑み、首を横に振って言った。
「これならこの先、いつも安心してここ来れるよ。」
「えっ?祥平、いつもここ来るってどういうこと?」
「あっ、いや、あの、その…、またこんな機会があったらって話で…。」
祥平にしては珍しく、あたふたしていた。
祥平、もしかして…。
「く、玖実が赤ちゃん抱っこしてたら、俺もお兄さんみたいに抱っこ代わってあげたり、オムツ取り替えたりしてあげるから…。」
これまでにないくらい顔が真っ赤に染まった祥平が、可愛くてたまらなかった。
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