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 そうか……そうだよね。  祥平君の “ 会いたかった ” は、そういう意味じゃなくて、ただ単に私に落とし物を届けたかっただけのことだったんだよね…。  私は、自惚れた自分が恥ずかしくなった。 「ありがとう。今度は落とさないように気をつけるね。」 「そうですね。あの日たまたま俺が拾ったからこうして玖実さんに届けることが出来たけど、普通だったら落としたらそれっきりですよ。今回は本当にラッキーでしたね。」  祥平君はまた柔らかく微笑んだ。  祥平君のその笑顔はズルい…。反則だよ…。  ときめいてしまうじゃん……。   「あ、あの…、私、祥平君に出会えて本当に良かったって思ってる。私を救ってくれた命の恩人だよ。感謝してます…。ありがとう。」 「いえ。俺はそんな大したことしてませんから。」 「大したことだよ!私の人生変わった瞬間だったんだから。」 「うん……そうか、そうなのかもしれませんね。」  祥平君は少し照れくさそうに返答した。 「私、祥平君にお礼がしたいの。今度何かご馳走させて。あの日カフェラテだって奢ってもらってるし。」 「そんな、全然気にしないでいいですよ。玖実さんがこうして元気になっただけで充分ですから。」 「それだと私の気が済まないの。私にお礼させて。祥平君の都合の良い日に。何か食べたいものある?」 「うーん、それじゃあ……  玖実さんの手料理が食べたいです。」
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