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「わ、分かりました。でも…、ホントにいいんですね?俺が行っても。」 「うん。もちろんだよ。」 「ホントですね?俺、何するか分かんないですよ?」 「えっ……?!」  私は思わずドキッとした。 「冗談ですから。しませんよ、そんなこと。……とは言い切れないかもしれませんが。」  急にドキドキが止まらなくなった。  どうしよう、ホントにそんなことになっちゃったら……。 「玖実さん?大丈夫ですか?聞いてます?」 「えっ?あ、う、うん。聞いてる。大丈夫。」 「全部冗談ですよ。心配しないでください。俺、カレーが食べたいです。」  話しているうちに、電車は私の降りる駅へ到着した。 「あ、私、降りなきゃ。でも、連絡先交換してないよね?どうしよう…。」  すると祥平君は、私の手を引いて一緒に電車を降りた。 「えっ?祥平君?」  電車のホームに降り立つと、電車の扉は閉まり、ゆっくりと発進していった。 「俺、次来るのに乗りますから、今のうちに連絡先交換しましょう。」  そう言って私たちは連絡先を交換した。 「明日部活が終わって学校出る時に連絡します。玖実さんのお家どこか分からないので、駅まで迎えに来てくださいね。」 「うん、分かった。じゃあ、カレー作って待ってます…。」 「楽しみにしてますね、玖実さんの手作りカレー。」  そう言って祥平君はまた柔らかく微笑んだ。  祥平君の笑顔を見て、私の心の奥はキュンと音をたてた。  次の電車が来て、祥平君が乗り込んだ。 「それじゃあ、また明日。」 「またね。明日部活頑張って。」 「ありがとうございます。玖実さんも帰り気を付けて。」  まるで恋人同士のような気分に、思いっきり浸る私だった。
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