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いつもの何気ない駅までの道のり、私の心臓は終始大きな音を奏でていた。行き交う車の音も、すれ違う人たちの会話も、何一つ聞こえないくらい……。
駅へ到着した。私は祥平君の姿を探した。しかし、祥平君の姿はどこにもなかった。
もう電車を降りているはず。嫌になって帰っちゃったのかな。私のこと、やっぱり迷惑だったのかな…。
マイナスな発想ばかり浮かんだ。
帰ろうかな……。
「玖実さん!」
振り返ると、
祥平君だった。
「スミマセン。今、駅のコンビニでスイーツ買ってて…。タダでご馳走になるわけにはいかないので買ってきました。コンビニのもので申し訳ないんですけど。」
「そんな、気を遣わないで。全然いいんだよ。」
「コンビニのスイーツもそれなりに美味しいですから、カレーの後に一緒に食べましょう。」
「うん、ありがと。」
そして私たちはゆっくりと私のアパートへ向かった。
「なんか…緊張します。」
祥平君が呟いた。
「ウチ、緊張するような大した所じゃないから。全然気楽に、ね。」
そういう私の方こそ、実は緊張していた。
アパートへ到着し、私は祥平君を部屋の中へ招き入れた。
「狭い所だけど、どうぞ。」
「お、おじゃまします…。」
ついに祥平君が私の部屋に足を踏み入れた。
「あ、カレーの匂い。めっちゃ美味しそうな匂いする!」
無邪気な笑顔で祥平君は嬉しそうに言った。まるで子供みたいで可愛かった。
そのお陰で、一気に緊張が解れた。
「今準備するね。座って!」
振り返ろうとしたその時、
私は思わず躓いた。
「あっ……!」
転倒するはずの私。気が付くと、私は祥平君に抱き締められていた。
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