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冷たい風が頬を撫で、私の躰を冷却していく。車輪の軋む金属音が遠くから鳴り響く。これは、今まさに “ 終わり ” というリングへ上がる私の入場曲だ。
いよいよその時は来た。日の光のないこの場所で、私は終わりを迎える。
嗚呼、あとはこの一歩で楽になれる。
「あの……」
私の背後からボソッと呟きが聞こえた。
私は思わず最後の一歩を引っ込めた。
ゆっくり振り返ると、そこには見知らぬ男子高校生が立っていた。そして私に語りかけた。
「どうかしましたか?」
男子高校生は、いたって冷静だった。私の心の中とは正反対だ。
「いえ…。私のことはほっといてください。」
私は涙を拭い、平静を装った。
「いや…、そんなんじゃほっとけないでしょ。」
男子高校生は私をじっと見つめた。グッと吸い込まれてしまいそうな真っ直ぐな瞳だった。
「あの…、もう平気なんで。スミマセン、ありがとうございました。」
私はよく分からないまま何故か男子高校生に謝罪と感謝をし、ホームを後にしようとした。
その時、
男子高校生は私の腕を捕らえ、私を引き止めた。
「だから、それがほっとけないんですって。また変なこと考えてますよね?」
この人は、どうしてこんなにも私を心配してくれるのだろう……。
何一つ知らない君を、不思議に思った。
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