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「私のせいで、辛いこと思い出させちゃったんだね、ごめんなさい。」  私の瞳から涙が零れ落ちた。 「私、もうあんなこと絶対にしないから。約束する。どんなに辛いことがあっても、ちゃんと生きる。祥平君だって辛いこと抱えてるのにこうやって毎日頑張ってるんだよね。逃げたりしない。前だけ向いて進んでいくから。」  祥平君は小声で「ありがとう」と呟いた。  私の涙がおさまり、祥平君も心を落ち着かせたところで、私たちはコーヒーショップを出た。そして二人でまた地下鉄の駅へ向かった。  二人で電車に乗り込み、隣同士で座った。 「祥平君、今日は本当にありがとう。私、祥平君に救われたよ。ありがとね。こんな見ず知らずの女を助けてくれるなんて、もう感謝しかないよ。」  祥平君は私を見て微笑んだ。 「玖実さんが前向きになってくれて良かったです。応援してますよ、頑張ってくださいね。俺も負けませんよ。」  私の心がほっこりと温かくなった。  電車に揺られ、間もなく下車となった。 「私、ここで降りるね。今日はどうもありがとう。」  そう言って私は立ち上がり、扉へ向かった。扉が開き、ホームへ足を一歩降ろしたその時、     「玖実さん!」  振り向くと、祥平君が扉の所まで来ていた。 「玖実さん、あの…」  祥平君が言いかけたところで、無情にも扉は閉まった。  電車はゆっくりと動き出し、車輪の軋む音を響かせながら、走り去っていった。  祥平君は、何と言おうとしていたんだろう…。私は気になって気になってしょうがなかった。
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