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祥平君は、何と言いたかったのだろうか…。私は、それだけがずっとずっと気になっていた。真相を確かめるべく、私はあれから同じ時間にこの地下鉄の駅に来ている。しかし、二週間経っても祥平君は現れなかった。
こんなことになるなら、連絡先を聞いておけば良かったと後悔した。でもあの時の私はそれどころではなかったから、これは仕方がなかったのだと自分に言い聞かせている。
祥平君に会いたい…。日を重ねるごとにその想いは強くなっていった。
いつかきっと祥平君と会えると信じ、明日もまた同じ時間にこの駅へ来ると決め、私は電車に乗り込んだ。
ちょうど一人座れるスペースが空いていて、私はそこへ座った。正面の窓に映る私の顔は、どこか疲れきっているように見えた。こんな顔じゃ祥平君には会えないな…。もっと女子力上げないと…。私は深く溜め息をついた。
「そんな溜め息ついてたら、幸せ逃げますよ?」
顔を上げると─────────────
そこには祥平君が立っていた。
「しょ…、祥平君!」
私は驚きを隠せず、あたふたした。
「玖実さん、お元気そうで良かったです。安心しました。」
柔らかく微笑む祥平君は、とても眩しかった。
「祥平君も…元気そうだね。私のこと、ちゃんと覚えててくれたんだ…。」
「当たり前じゃないですか。ホームから飛び降りようとしてたんですよ?あんなインパクト強すぎなこと、忘れるわけないじゃないですか。」
まぁ……そりゃそうか。どうせそういう認知ですよね…。
「そ、そうだね…。ごめんね、あんなことしちゃって…。」
私はとても申し訳ない気持ちになった。
「今日やっと玖実さんに会えて本当に良かったです。俺、ずっと玖実さんに会いたかったんです。」
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