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心が満たされるということ
寧々の話を真はよく聞いてくれた。
子どもたちの話だけでなく、好きな曲の話、ドラマの話、映画の話、スポーツの話、きっとどうでもいい内容ばかりだ。
でも真は全部覚えてくれていた。
ものすごい記憶力だな、と寧々は思っていたが、
真はただ寧々の話を聞くのが好きだった。
そしてほとんど話した全ての内容を忘れないでいてくれた。
子どもたちの塾や習い事の日程も全て把握していて、『今日は長女ちゃんの塾だね!送迎がんばれ!』と応援してくれた。
自分の子どもがなんの習い事をしているのかすら把握していない康介と比べてしまう。
比べるなんてことは本当に無駄なことだが、
やはり比べてしまう。
本当に自分のことを想ってくれて、こんな素敵な男性がこの世にいることに驚かされた。
こんな安心感はもしかしたら人生でいちばんかもしれない。
こういう人と結婚したら幸せだったんだ。。
康介を選んだときの自分を信じたい。
寧々はそう自分に言い聞かせてこの15年の結婚生活を生きてきた。
全部が全部辛いものではなかったが、本当に心が満たされることはない15年だった。
そろそろ、もうその誤魔化しがきかなくなっていた。
康介を選んだときの寧々は、康介とと言うよりも、結婚がしたかった。よく言われるまさにそれだ。
もっと真剣に向き合って、人生のパートナーとしてふさわしい人を選ぶ。
そんな余裕が若さゆえになかったのかもしれない。
こういう決め方で結婚してしまう人はこの世におそらくたくさんいるだろう。
今だったらきっとこんなリスクの高い決め方はしない。
でも慎重に決断をしても、間違うこともある。
間違ったら離婚という大きなリスクを背負ってしまう。子どもがいれば尚更だ。
結婚はものすごい賭けなのだ。
寧々はどこをどう取っても、どう考えても、
真と居る方が幸せだ。
真と居る時の寧々はとても可愛いし、輝いている。
そしてそんな寧々をまた真は可愛いと思う。
幸せの相乗効果。とでもいうのだろうか、
寧々と真は一緒にいればいるほど、お互いを高めあい、癒され、なくてはならない存在になっていった。
真が誉めてくれるからそれに応えようと頑張れる。
心が満たされる。
『寧々ちゃん、俺にはなんでも言ってね。嫌なことも嬉しいことも、悲しいことも全部受け止めるから。寧々ちゃんが今まで辛かった分、俺が全部支えになりたいから。』
探してたのはこの感覚。
心が満たされる感覚。
愛情を感じて愛したいと思う感覚。
こういうのが幸せなんだと思う感覚が同じ。
寧々にとっての最高のパートナーはそういう人だ。
今ごろ気付くなんて。。。
今ごろ出会うなんて。。
女性は必要とされて、愛されて、敬われて輝く。
愛されているという自信を持つことで余裕のある毎日を過ごせるのだ。
どこかで読んだフレーズが、まさにこういうことなんだと寧々の心を突き動かしていった。
真から暑い夏の日、
『寧々ちゃん、お休みの日1日デートできないかな。プランとか任せてくれたらいいから。
無理はしないでいいんだけど。
日にちは合わせるから考えてくれたらうれしいな。』
初めてこんなお誘いを寧々はうけた。
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