ずっと一緒にいられたら

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ずっと一緒にいられたら

暑い夏の日、2人は初めて1日ゆっくり時間をとって会うことになった。 康介や子ども達にはなんて言おう、、 色々考えたが嘘の理由を詳しく話すのは寧々には無理だった。 お友達と出かけてくるね。とだけ伝えて逃げ出すように家を出た。 電車に乗った瞬間、寧々は解放された気持ちになった。 康介は仕事とはいえ、飲みの席や出張などが多く、 寧々は色々な心配をしていた時期もあった。 そういう狭い世界で15年を過ごした寧々には、 大好きな人に会いにただ一人で電車に乗ることさえ新鮮で愛おしい時間だった。 苦しかった日々、辛かった時間、マイナスの感情が さーっと洗われるように消えていった。 電車で3駅、降りたところで真は待ち合わせをした。そういうリスク回避は彼は完璧だった。 それは不倫慣れ女性慣れと普通ならそう考えるのかもしれない。 だが、ただただ真は寧々のことを想ってベストな選択をしてくれていた。 寧々もそう信じていた。 改札をでると、車を停めた真が待っていた。 優しい笑顔と清潔感が真の魅力だった。 さっと車に乗った寧々に真は 『時間とってくれてありがとう。 お家は大丈夫だった?』 と声をかけた。 『寧々ちゃんと一緒に海が見たくて。。』 2人はずっと車内でたわいもない話で盛りあがりながらあっという間に海に着いた。 『綺麗、、、』 こんなに海をゆっくり見たのは何年ぶりだろう。。 このまま真と一緒に消えてしまいたい。 もう康介のところには戻りたくない。 現実逃避しそうになった。。 ところに子どもから代わる代わるの着信。 子どもたちのことは康介にお願いして出てきてるのだが、やはり康介では頼りないのかもしれない。 寧々は母親だ。 どんなに未熟でもやはり子どもたちとは離れられない。 離したくない。 何やってるんだろう、、 一気に現実に戻ってしまった。 真はそれにすぐに気づいた。 『今度は子どもたちも一緒に来れたらいいね、 でも難しいか。。』 真は照れながら言った。 寧々は微笑むことしかできなかった。 寧々は、真が子ども達の父親だったらいいのに、、 そうしたらずっと一緒にいられるのに。。 本気でこの頃からそう思っていた。 旦那さんと子どもと遊園地に行くのが寧々の夢だった。 康介は遊園地が嫌いで家族で行く夢は叶わなかった。 妻や子どもの喜ぶ顔を見るのが僕の幸せ。 そう思ってくれる人と結婚するべきだった。 寧々はそれがまさに真のような人であることに気づいていた。 ちょっと早めに切り上げたドライブだったが、 真は『今までで一番寧々ちゃんと長くいられて幸せだったな。』と言った。 家族で遊園地に行くのが夢だという話はだいぶ前に真にした事があったが、話したことすら忘れていた寧々に真が少し緊張しながら言った。 『今度寧々ちゃんと子どもたちさえよかったら、 子どもたちも一緒に遊園地行こう。 俺が寧々ちゃんの夢を叶えたいんだ。』
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