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「お義母(かあ)さん、わたしもお料理手伝います」  息子の新妻が、台所に立った私にそう声をかけた。見れば、自分のカバンからエプロンを取り出そうとしている。  義実家での好感度の高い振る舞いを、調べてきたのだろう。  できた嫁だなぁ。  掛け値なしに、そう思う。 「いいのよ、料理はほとんどできてるの。じゃあ(あかね)さん、洗い物は一緒にしてちょうだいね」  私がそう言うと、嫁は「はい」と素直に聞き入れて、浮かせた腰を椅子に戻した。  少し残念そうな、でもホッとした顔を──しているのだろうか、もしかしたら。  わからない。  私には、蝶の表情を読み取る技術がないからだ。  嫁の茜さんは、夜の蝶だったそうだ。それをあらかじめ聞かされていたせいか、私には彼女の姿が蝶にしか見えない。  夫と息子の言動から察するに、茜さんはかなりの美人らしい。確かに、息子よりずっと直視に耐える外見だと、私も思う。大きな目や渦巻く口をアップで見なければ。
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