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「彼女のアイコン、ちょうちょなのね、とてもきれい」
まだ茜さん本人に会っていなかったとき、息子のスマホ画面を見て、そう言ってしまったことがある。
「母さん、どこ見てるの?」
「え?」
「これ、茜の自撮りだよ、横顔だけど」
「あ……っ」
ハッとした。それまで、虫に見える人間は息子だけだったからだ。
「あら、ホントだ。やあねぇ、光の加減で、ちょうちょみたいに見えたのよ」
咄嗟にそう言って取り繕ったものの、何度見直しても私には、アイコンの写真が蝶にしか見えなかった。
あのときはまだ、茜さんは息子の交際相手だったけれど。私は直感した。この子は浩史の運命の人、きっと妻になるのだろうと。そしてその直感は、見事的中したのである。
「なんて言うか……価値観が合うんだよ、茜とは。他の女とは違うんだ」
息子のその言葉に、私は首がもげるほどうなずいた。「さもありなん」とは、こういうときのためにある言葉だと思ったほどだ。
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