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産院からの帰り道、ほころび始めた桜の蕾を見上げて、夫が苦笑する。
「茜さんには悪いけど、生まれたての赤ちゃんって、宇宙人みたいだよな」
「顔もくしゃくしゃだものね」
(ほうほう、宇宙人ですか)
「浩史も、あんな感じだったっけかなぁ」
「みんなそうですよ」
(いいえ、浩史はちゃんと人間の姿をしていました)
うつむくと、桜木の根元にダンゴムシがいる。さっき目にした光景を思い出し、長いため息がもれた。
(ああ、私これからどうすればいいのかしら……)
だっこなど、とてもできなかった。
産着に包まれた初孫。湊と名付けられた彼は、乳白色でツヤのある、芋虫の姿をしていたのである。
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