3.

2/3
前へ
/11ページ
次へ
 産院からの帰り道、ほころび始めた桜の蕾を見上げて、夫が苦笑する。 「茜さんには悪いけど、生まれたての赤ちゃんって、宇宙人みたいだよな」 「顔もくしゃくしゃだものね」 (ほうほう、宇宙人ですか) 「浩史も、あんな感じだったっけかなぁ」 「みんなそうですよ」 (いいえ、浩史はちゃんと人間の姿をしていました)  うつむくと、桜木の根元にダンゴムシがいる。さっき目にした光景を思い出し、長いため息がもれた。 (ああ、私これからどうすればいいのかしら……)  だっこなど、とてもできなかった。  産着に包まれた初孫。(みなと)と名付けられた彼は、乳白色でツヤのある、芋虫の姿をしていたのである。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加