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息子から送られてくる写真も、「♡Baby Has Come♡」の葉書でも、孫は芋虫にしか見えない。
「はじめての笑顔」「歯が生えたよ!」「イケメン風に撮れました♡」そのすべてが、冗談としか思えない。
私は真剣に、困っていたのだけれど。
そんな私の一歩引いた対応は、理想の姑として孫活雑誌「おまごくらぶ」の取材が来るほど素敵だったらしい。
孫に似合う服など考えつかないから、勝手に買ったものを送りつけたりせず。
孫が熱を出したと聞けば、病児保育士を調べてその費用も負担して。
「孫の顔を見せに来い」とせっついたりなど、一度もしたことがない。
なんせ、芋虫にしか見えないのである。初孫とはいえ、溺愛しろと言われても無理な話だ。
(ほうほう、この距離感が素敵とは。災い転じて福となす、だわね)
考えてみれば、息子が虫にしか見えなくても、二十五年間特に問題はなかったのだ。
(よかった……)
夫が壁に貼った孫の七五三写真を眺め、私は笑顔で安堵の息を吐いた。
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