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「お姉さん、ぼくら、どうなっちゃうんだろう」
わずかにわかる陰影の中で、晴翔が不安を滲ませる。
過去に引きずり戻されそうな感覚が、紬の全身を駆け巡った。
逃げ道なんかない。どこにも行けない、誰もそこにはいない。
だったら、このハウスの中だけで暖め合えればいい。
どうせ、出口なんかありはしないのだから。
ぐらり、と意識がぶれる。晴翔の肩がふれる腕から、なまぬるい体温が伝わってくる。
『定時連絡。生きてるか』
それは、霹靂だった。
『現在、出発から76時間。お前といる晴翔は身元が照合できた。神奈川県藤沢市在住、両親の所在も判明した。それから、その子以外にもそろそろ目覚める他の子どもが出る頃だ。彼らは不安だ、パニックになるかもしれない。または意識障害になっている可能性もある。気をつけろ』
「……ケホッ」
軽く咳をした。
「お姉さん?」
「大丈夫。悪い夢は、絶対に終わるから」
つとめて明るく言った。
大丈夫、光はもうここにある。
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