CLOSER 事件No.3 「箱庭遊戯」

199/199
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「お姉さん、ぼくら、どうなっちゃうんだろう」  わずかにわかる陰影の中で、晴翔が不安を滲ませる。  過去に引きずり戻されそうな感覚が、紬の全身を駆け巡った。  逃げ道なんかない。どこにも行けない、誰もそこにはいない。  だったら、このハウスの中だけで暖め合えればいい。  どうせ、出口なんかありはしないのだから。  ぐらり、と意識がぶれる。晴翔の肩がふれる腕から、なまぬるい体温が伝わってくる。 『定時連絡。生きてるか』  それは、霹靂だった。 『現在、出発から76時間。お前といる晴翔は身元が照合できた。神奈川県藤沢市在住、両親の所在も判明した。それから、その子以外にもそろそろ目覚める他の子どもが出る頃だ。彼らは不安だ、パニックになるかもしれない。または意識障害になっている可能性もある。気をつけろ』 「……ケホッ」  軽く咳をした。 「お姉さん?」 「大丈夫。悪い夢は、絶対に終わるから」  つとめて明るく言った。  大丈夫、光はもうここにある。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!