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02
オフィス、と通称で呼んでいる部屋はこの煉瓦造りの古びた屋敷の中で最も広い部屋になる。その廊下は漆喰と煉瓦、少しばかりアンティークな内装の空間が長く端から端まで伸びている。
「おいって、ちょっと!」
赤城の足音がどだどだと響くが、うるさそうに眉があるべき眉間をしかめた紬が振り返った。すこぶる機嫌の悪そうな細められた目に、思わず赤城はひえ、と口に出しそうになった。
「……なに」
「なに、って、いやほら指示を受けたばっかだろ。同じシステム屋なんだし調査の範囲とか方法とか、被ってるだろ仕事が。んだから作業の前にちょっと話をしたほうが効率がいいだろ、って」
それだけなんだけど、と口の中で続けたのだが、夏場になっても相変わらずの黒い服しか着ない紬は、殺意すら感じるような極悪な顔で見上げてきた。
視線だけで人を殺せるタイプの目つきだ。
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