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「……2014年当時の捜査本部はずいぶんと力を入れてたみたいだな」
積み上がる資料は、この事件に関わった捜査員たちの汗が作ったものだ。
捜査資料を読み進める亜豆には、それでも被疑者に届かず少女を発見できなかった悔いが見えるようだった。
「両親と2歳年下の弟、マンションで4人暮らし。当時5歳だった牧村沙知は、2014年5月4日、ゴールデンウィークの最中に熱を出した弟の看病で忙しい母に公園へ行ってくると言い残し家を出た。だがそのまま、帰らなかった。……年齢と虐待の兆候はなく家庭環境は良好であることから、家出の線は消えて誘拐の可能性が浮上した。帰宅した父親が警察に通報したあとは、資料に細かく記録されているとおり……だね。なにか引っかかる?」
細い目の時宗が持ち前の柔らかい雰囲氣のまま問うが、亜豆の表情は変わらない。
「牧村の父親、ゴールデンウィークの真っ最中に仕事なあ。3歳の息子が寝こんでても行くほど重要な仕事があったのか」
「まあ、そういうサラリーマンはいても不思議じゃないよ。実際のところ、毎日の慣れた仕事よりたまの休みに元気いっぱいの幼児を相手にする方が疲れるだろうし」
時宗の言葉に、亜豆が片眉を上げた。
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