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「で、課長。俺たちに捜査本部に乗り込んでこの殺人事件を捜査しろ、と?」
「いや、それは神奈川県警の仕事だ。割り込むつもりはない。うちはうちの仕事をする。赤城が調査していたデータベースのバグとしてかかったのがこの被害者、牧村沙智だった」
「バグ?」
「そう、刑事事件の被害者として上がった牧村沙智に紐づく全IDや情報の中で異常なデータがあった。ーー捜索願だ」
「捜索願?」
亜豆の声にうなずくと、樫家は別の画像をモニターに展開した。
「牧村沙智が5歳の頃、自宅近くの公園で遊んでいる間に行方不明になった。いたずらまたは営利目的の誘拐が考えられ、両親は警察へ通報。二度ほど犯人らしき人物から連絡があり、事件として捜査が始まった。だが、その後犯人側からの連絡は途絶え、10年の月日がすぎた。……と警察のデータベース上に記録があるが、事実この牧村沙智はそれから18年後の現在、会社員として勤務し遺体でみつかった」
「まさかですけど、捜索願を取り下げるのを忘れてた、とか。もしくは書類を受理した警察側の入力ミス、とか。まーあり得ないとも言い切れないところが悲しいんだけどね。人間だから、おまわりさんも」
茶化したような時宗の言葉には、赤城が苦笑いを薄く浮かべた。
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